『ゴジラ キングオブモンスターズ』

ヤバい!昨年あたりからどんどんつまらなくなってるエンタメ映画の真打ちが来てしまった。何もかもが安易で陳腐、観客をバカにしたようなところもあって腹も立った。最近のシリーズもの映画を観ていると、大手チェーン店の新商品のコマーシャルを二時間観てるような感覚になる。もはや映画を観るというより、あらかじめ想定しているものを確認しに行く作業に近い。フランチャイズ映画というのは伊達ではないわけだ。そんなわけで、ずーっとあくびと苛立ちの連発でした。

酷いのは人間ドラマ。はなから大したやる気もないならやらなきゃ良いのにと思った。それで描かれるのが超つまらないウェットなドラマなのが腹立つ。キャラクターは全員ムカついた。特にチャン·ツィーお前はすっこんでろ。せっかくクライマックスで雲のなかからモスラがカッコよく急降下して登場してきても、間にチャン·ツィーの「目を閉じて共鳴してます顔」のカットを挟まれるから冷める。他にも、放射能を浴びて復活したゴジラ海上に出てからカイル·チャンドラーと見つめあったり(怪獣が人間と見つめあってんじゃねえ!)、渡辺謙のどうでもいい自己犠牲も最低。序盤で相棒のサリー·ホーキンスを殺したのも、この自己犠牲のためなのか。『アベンジャーズエンドゲーム』のスカヨハ自己犠牲にも感じたことだけど、近親者がいないものは死んでも大丈夫とでも思ってるのか。そんな安易な人間観最低だ。「さらば、友よ」なんてそれっぽいだけでまるで感動しない台詞を言われても困る(ゴジラと眼が合った瞬間に、がぶっと喰われろと思った)。それと渡辺謙演じる彼にとってあの自己犠牲は、憧れのゴジラに身を捧げて一心同体になるというポジティブな思いも込められているのではないか。だったら『インデペンデンスデイ』の「宇宙人ども帰ってきたぜぇ!」くらい前向き感があっても良いのでは?本作に限らず、自己犠牲を不必要にウェットに盛り立てれば感動を作れると思ってる軽薄な作品は大嫌い。

どうでもいいキャラクターがどうでもよく織り成すドラマが、楽しいはずの怪獣描写にブレーキをかける。そうなると怪獣描写にも雑さを感じて乗れなくなる。だいたい、本作はドラマにしろ怪獣にしろ大したことないものを大仰にそれっぽい感じで描いてるだけに思える。監督のドハティのインタビューを読んでもそれっぽいこと言って高尚に思わせてるだけに感じる。本作はただガタガタの脚本(これでゴーが出るのが信じられない)に紋切り型の演出しか出来なかった結果、すごくアホで幼稚な映画にしかならなかった。しかもアホが行き過ぎて異常になった感じも一切ない。たとえば本作と似たタイプの映画でいえば『トランスフォーマー最後の騎士王』はアホが行き過ぎて異常だった。

前作のゴジラは画面も暗く、もっともらしいリアリティに寄りかかり過ぎて映画としては弾けきらないところもあったけど、新たな怪獣の見せ方やディテールへのこだわりは徹底させていて立派だったなあ、と改めて思った。敵怪獣ムートーの無機物と有機物の中間のような見た目も斬新だったし、怪獣映画としては新しいことをたくさんやっていた。だから、たとえ本作と同じようにドラマがつまらなくても許せた。そのつまらないドラマだって、真面目にやろうとして失敗したようなつまらなさだったから、本作のよりはマシだった。

音楽の不満もある。前作でせっかくアレクサンドラ·デスプラが作ったゴジラのテーマを使わず、伊福部音楽に戻るのは後退してるとしか思えなかった。