『キャプテンマーベル』

女ヒーロー映画で、監督と脚本家も女。流行りのフェミニズム映画の側面もあるかもしれないけど、それだけに終始せずエンタメ映画として普遍的だったのが何よりも良かった。その普遍性を担っていたのは主人公ブリー・ラーソンの明快かつ抜けの良い魅力だった。

今のエンタメ映画で女主人公、ヒーローを扱うとどうしてもフェミニズムテーマが際立ち、そのテーマを主張することに終始して、映画としての面白さや魅力(それが自分の考える普遍性)がなくなることが多いと思う。『~マーベル』以前に女ヒーローを描き、映画としても普遍的であったのは『マッドマックス怒りのデスロード』と2016年の『ゴーストバスターズ』だと思う。特に『ゴーストバスターズ』は決して見た目が美人でも強そうでも全くない女優たちを主人公にしたという点で、どの女ヒーロー映画よりも重要だった。しかし、その方向性がコメディ映画以外には受け継がれていないのがすごく悔しい。男は昔からチャールズ・ブロンソンやリー・マーヴィンのような見た目の奴もヒーローをやっている。しかし女になると見た目の多様性が失われがちなのは、今後のエンタメ映画の課題だと思う。いつかマーベル映画が見た目の冴えない中年女性をヒーローにする日が来たっていいはずだ。 

終盤の信頼していた人物が最大の敵だったという展開も含め、物語は女ヒーロー先取り映画の『ワンダーウーマン』と類似するところがかなり多い。どちらもいわゆる「女性神話」をベースにしているから、類似せざるを得なかったんだろうけど。

主人公が覚醒してからの大暴れっぷりが良い。覚醒後の大暴れを「just a girl」という明るめの楽曲に乗せてコメディタッチで見せるのが賛否両論あるようだけど、この映画には合っていると思う。いくらでも重たくシリアスに詰めれそうな展開を終盤はたくさん用意しながら、それでも明るく明快に進むのはキャプテンマーベルの何度でも立ち上がり続けるキャラクターに相応しく、映画としての洗練よりも、主人公のことを大事に描くことを優先している感じがして良かった。

ただ大暴れ後、師匠であり真の敵のジュード·ロウとの対決はギャグにせず、ちゃんと見せ場にして欲しかった。舞台がそれまでと打って変わって荒野になるのも含めてマカロニウェスタンぽいシチュエーションだっただけに期待してしまった。

アクションの見せ方が下手という批判もあるようだけど、クライマックス、主人公が地球に発射されたミサイルを止めるショットを大きさの対比がよく分かる横の構図で見せたりと、大事なところはしっかりキメていて(真面目ゆえに弾けてはいないと思う)、アクションの演出が下手という印象は持たなかった。

ラスト、ジャケットを着てぴょーんと宇宙に飛び去るマーベルの近所のお姉ちゃん的なラフさがカッコよくて好きだ。この映画のブリー·ラーソンはスケバンみがある。その後、名残惜しそうに地球を見下ろすショットもグッと来る。ここら辺は目頭が熱くなった。

個人的には『ドクターストレンジ』以降のすべてのマーベル映画は共通するつまらなさを抱えていると思っていて、もう観なくてもいいかと思っていたところで、ここで一気に持ち直したので『アベンジャーズエンドゲーム』にはものすごく期待をしています。